そのアトリエは溺愛の檻
「正直言うと、必要とされていることはちょっとだけ嬉しいんです。出来上がったモノクロの写真は、メディアで見かけるアキの写真とも個展で見た写真とも違ってるし。なんというか、特別感があるというか」


重秋といると危険だと思う反面、彼と過ごす時間を喜んでる自分も存在している。そのことを、二人に話すことで改めて自覚した。

確かに、あんな魅力的な男性に必要だと求められたら嬉しいのは当然だった。だけど、自分自身いろいろ後ろめたいことが多すぎて、素直な感情まで抑え込んでしまっていた。

撮影を重ねて触れ合う回数が増え、抑えきれなくなった感情が膨らんで溢れ出てきた。


「ふーん。この顔で、有名なフォトグラファーで、別荘みたいなアトリエはデザイナーズマンションの最上階。確かにこれはモテるな」

賢木くんはスマホでアキを検索していたらしく、写真を見ながら呟いた。


「でも男の立場から言わせてもらうと、雨宮チョロすぎ。アトリエだって全国にいくつあるか。特別感のある写真撮ってもらってんのも雨宮だけじゃないかもよ?」

「それは……」
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