そのアトリエは溺愛の檻
「賢木、助けて、百音がピュアでまぶしすぎる。何この真面目っ子」

「というか思春期の子供っぽいです」


いやいやいや。真剣に話してるのに。何、これって私がおかしいの?


「二人とも普通に酷い。私は真面目に話してるのに」

「だから、真面目すぎるんだって。いいじゃん、感情むき出しでも。逆に誘惑するくらいの覚悟でいけばいいのに」

「無理です。あれは常人に太刀打ちできると思えません。あの色気は警報レベルです。『自分を魅力的に見せられない人間が人の魅力を引き出せると思う?』とか平気で言っちゃうんですから」

「うわ、かっこいいわ、それ」

「恐ろしいですよね。まるで魅力の機関銃ですよ。まともにくらったら瞬殺ですから。だから私、そのことを考えなくてもいいように、邪念を振り払えるように、最近すっごい集中して仕事してるんです」


「ここで仕事が出る?」

話を聞いた奥田さんと賢木くんが噴き出した。

「何か可笑しいですか?」

「いや、ごめん。最近百音が鬼気迫る勢いで仕事こなしてた理由はこれかと思って。繁忙期でもないのにどうしたんだろうって不思議だったけど。ま、そういう気持ちを仕事に向けるあたりが百音らしいよ」

「うん、雨宮らしい」


どうせ真面目で面白くない女ですよ!
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