そのアトリエは溺愛の檻
そう思っていたのに、すんなり進まないのが仕事というものだから困ってしまう。

電話での問い合わせの対応が予定外だった。突然かかってくる問い合わせだけは時間が読めないから困るけど、これも仕事だから文句は言えない。

午前に今日中に終えるべきことは七割完了し、これならお客様対応の後でも余裕で終われそうだと安心していたのに、ちょうどお客様がいらっしゃった時に電話から離れることができず、ちょうど近くにいた一つ上の先輩の奥田さんがお客様を応接室に案内してくれたようだった。


「すみません、私がご案内する予定だったのに」

「いいよいいよ。電話長かったけど大丈夫だった？　クレーム？」

「いえ、使い方がわからなかったみたいで説明していて。あと消耗品の発注もあったので」

「問題ないならよかった。私もう出るから、応接室に飲み物よろしくね。部長とお客様だけだから二つ」

「ありがとうございます」

「すっごい良い男だったから、びっくりしちゃった。美形ですらっと背が高くて、どこかで見たことある気がするし、モデルさんか何かかも。今からのアポがなかったら、私が対応したかったくらいだよ」


美形で背が高いって奥田さんが言うなら相当だ。
というのも結婚式で見たけど奥田さんの旦那様はとてもかっこよかったし、奥田さん私と同じくらい背が高い。
< 8 / 113 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop