そのアトリエは溺愛の檻
だけど彼女も重秋も有名になってしまい、二人きりの世界を作ることが難しくなり、最高の一枚にたどり着けなかった。
お互いのキャリアのために二人は距離を置き、それ以来重秋は仕事では人物を撮らなくなった。新しいミューズを見つけるため彼女とは正反対のタイプの人間を選んでも、結局彼女のイメージに近い格好に着せ替える。この前の私のように。
私が喜んだふわふわの髪と服は彼女の代わりだったのだろうか。私は月曜から彼女を撮影するための練習台だったのだろうか。あのキスも……。
後悔しないと思っていたのに、胸が苦しくなる。
彼のミューズになれるなんてそんなこと思っていない。甘い言葉も優しいキスも、ほんの一時のまやかしだって分かってた。だけど、こんなにも胸が苦しいのは、私が彼を好きになってしまったからだ。
重秋は「ミューズを求めている」と口にした。「探している」ではなかった。手放してしまった彼女を再びを求めているのかもしれない。
水嶋雪乃との旅行が決まっているのに、その直前に別の人間に甘い言葉を囁いた重秋はとても酷い男だ。酷くて悔しくて悲しくて、それでも彼を好きな気持ちがあるから、泣きたくなる。
その日の夜、水嶋雪乃は事務所を通して、熱愛報道を否定するコメントを出していた。それによると、アキとは昔からの友達で、今回は一緒に旅行しているが二人ではなく他にも同行者がいた、ということだった。
お互いのキャリアのために二人は距離を置き、それ以来重秋は仕事では人物を撮らなくなった。新しいミューズを見つけるため彼女とは正反対のタイプの人間を選んでも、結局彼女のイメージに近い格好に着せ替える。この前の私のように。
私が喜んだふわふわの髪と服は彼女の代わりだったのだろうか。私は月曜から彼女を撮影するための練習台だったのだろうか。あのキスも……。
後悔しないと思っていたのに、胸が苦しくなる。
彼のミューズになれるなんてそんなこと思っていない。甘い言葉も優しいキスも、ほんの一時のまやかしだって分かってた。だけど、こんなにも胸が苦しいのは、私が彼を好きになってしまったからだ。
重秋は「ミューズを求めている」と口にした。「探している」ではなかった。手放してしまった彼女を再びを求めているのかもしれない。
水嶋雪乃との旅行が決まっているのに、その直前に別の人間に甘い言葉を囁いた重秋はとても酷い男だ。酷くて悔しくて悲しくて、それでも彼を好きな気持ちがあるから、泣きたくなる。
その日の夜、水嶋雪乃は事務所を通して、熱愛報道を否定するコメントを出していた。それによると、アキとは昔からの友達で、今回は一緒に旅行しているが二人ではなく他にも同行者がいた、ということだった。