そのアトリエは溺愛の檻
そう言われて、やっぱりと思った。雑誌で見たことがあったけど、改めて見るとタイプは違うけど重秋に似ている。

というか、工藤商事の部長だよね。いくら弟だからって、どうして彼がわたしを迎えに来るのだろうと疑問に思わずにはいられない。こんな忙しそうな人に迎えに来てもらうなんて申し訳ない。


すると、彼が不思議そうに私の顔をじっと見つめていて、ハッとした。


「あ、すみません。雨宮百音です。今日は迎えに来ていただいてしまってすみません。よろしくお願いします」

「いえ、雨宮さんはお気になさらずに。乗ってください」


彼に促され、後部座席に乗り込む。助手席には誰もいないけれど、万が一に備えて後部座席にと言われた。雑誌の記者がいるかもしれないし、念には念をということだそうだ。


車の名前は全然わからないけど、高級そうな車だ。こんな別世界の人を運転手に使うなんて、申し訳ないやら緊張するやらで変な汗をかいてしまいそうだった。
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