そのアトリエは溺愛の檻
自分から話しかけられないので、運転中、斜め後ろから冬樹さんの顔をそっと眺める。

冬樹さんはクールと言うか知的そうなイメージだし、華やかな重秋と雰囲気はまったく違うのに、どこか面影があるから不思議だ。しかし、兄弟揃って凄い容姿。


「兄と似てますか?」

「あ、はい……。よく」

「僕が父似で兄は母似なんですけどね。それでもよく似てると言われます」

「よく会われたりするんですか?」

「年に1〜2回食事をする程度ですかな。お互い国内外飛び回っているから予定が合わなくて」

「でも仲が良いんですね」

「どうだろう。ま、今回は事情が事情なので」


どういうことだろう。兄がマスコミの注目の的になると会社的によくないのだろうか。いくら公開してないとはいえ、そういうのを嗅ぎ付けるのがマスコミだし……。


少し考え込んでいると、「ちょっお伺いしてもいいですか?」とためらいがちに尋ねられた。

重秋との関係だったらどう答えようかと思いつつ、「はい」と返事をする。


「以前どこかでお会いしたことがありますか?」
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