そのアトリエは溺愛の檻
「そっか。それなら今日は撮影はやめておこうか」

「すみません……」


あれだけ撮影にこだわっていたのに、こんなに簡単に引き下がっちゃうんだ。やっぱり本当のミューズを撮影した後だから、もう代わりはいらないのかもしれない。


「じゃあカレンダーの写真のイメージを持ってくるから。座って待ってて」

「はい」


部屋に通されると、いつもと部屋の雰囲気が違うことに気がついた。いつもより部屋の中にモノがたくさんある。しばらくこっちにいると言っていたし、東京から仕事で使うものを運んで来たのかもしれない。整理中なのかこの綺麗な部屋に似合わず雑多な感じだ。


ソファーに行こうとした時、チェストの引き出しが半分開いているのが目にとまった。こういうのも珍しいなと思ってちらっと見ると、そこには水嶋雪乃の写真が入っていた。

温泉宿の浴衣姿で、ドラマやCMで見るよりずっと可愛らしく見えるのはとても幸せそうに笑っているからだと思う。その写真は本格的なポートレイトというよりはスナップ写真のような自然さがある。
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