そのアトリエは溺愛の檻
きっと、この前の私のようにライフワークの撮影を終えて、着替えて自由に撮影したのだろう。こんな写真があるのだから、二人の関係は想像がつく。

私がこれを見てしまったことに気づかれないよう引き出しを閉じ、ソファーに座る。

頭だけでなく、本当に胸が痛い。私はもう彼のモデルを続けられない。こんな気持ちで撮影をしたらきっと胸が張り裂けてしまう。


「おまたせ」

彼の声が聞こえて我にかえり、背筋を伸ばす。仕事なんだから個人的な感情は出さないようにしないといけない。この前はあんなに自然でいられたのに、今はしないといけないことで、がんじがらめの状態だ。


正面に座った重秋が「どうぞ」と言ってA4サイズの封筒を差し出した。中を開けると「アキ」の写真が入っている。



「きれい」

それを見て、一瞬他のことが頭から消えていた。写真の美しさが考えることを停止させた。

倉橋が依頼していたのは「街」をテーマにした写真だった。
東京、京都、大阪はわかるけれど、他はどこだろう。そう思いながら色鮮やかな写真を眺める。

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