【短】うさぎとピアスとチョコレート
「いいよ。無理しないで」
「無理?」
「不味いんでしょ。甘いもの、苦手でしょ?」
「全然」
そんなわけない。大我が毎年バレンタインチョコを拒絶してきたことを、わたしは知っている。
「え、待って……甘いの平気になったの?」
「平気もなにも。好きだよ」
――は?
「嘘、ついてきたの? 食べられないって」
「うん」
ケロッとした顔で答えるとまた一粒チョコを口に運ぶ。その仕草が美しく、口元をみてさっきあんなに近くにあった記憶が頭から離れずにドキドキしてしまう。
「うんって……そんな……どうして?」
「毎年バカみたいに渡されるから。貰いすぎても食べられないし。そもそも他人からもらった、それも手作りチョコなんて気持ち悪くて受け取りたくもない。『苦手』って、丁度いい言い訳だろ?」
「酷っ……!? 人が気持ち込めて作ったもの、なんだと思って……」
「だったら、受け取って欲しかった?」
(え……)
「他の女からの手作りチョコ、俺が食べれば満足?」
――そんなの、嫌だ……。
「うさぎのチョコは美味しいよ」