【短】うさぎとピアスとチョコレート


「……ほんと?」

「ほんと。嘘じゃない」

「さっきは、不味いって言ったクセに」

「考えてもみてよ。うさぎが甘い香り漂わせて。わくわくしながら、こんな時間に……他の男に気持ちを込めて作ったものなんて世界一不味いと思わない?」


 そんなことをいって、エプロンをするりと脱がされる。


「え、と……」

「そんなものゴミ同然だと。捨ててしまおうと考える俺、おかしい?」


 おかしく……ないデス。

 だってそれはつまり
 いわゆるヤキモチってやつなわけで。

 いや、でも、食べものを粗末にするのはよくない。


「大我……は、わたしが他のひとにチョコ作ったら嫌なの?」

「嫌? そんなもんじゃ済まないよ」

「……え?」

「うさぎの手作りチョコなんて食ったやつ、俺が赦(ゆる)すわけないでしょ」

< 11 / 17 >

この作品をシェア

pagetop