【短】うさぎとピアスとチョコレート


 そんなことないよ。
 バレンタインチョコなんて小学生の頃から渡してる子は渡してる。


 恋をするのに、
 遅いも早いもないでしょ……?


「離れて、大我」

「誰?」


 さっきから変わらない距離感に
 ドクンドクン、と鼓動は速まるばかり。


「大我っ……」

「同じ学校の男?」


 息がかかる。


「離れてってば。お願い」


 じゃなきゃ――思考が停止しそうなんだ。


「どうして生チョコを選んだの」

「それは……本命は、生チョコだから」

「本命? ガキのお前が?」

「……好き、なの……」

「どんなやつ?」

「遠い人。わたしなんか、全然届かないような」

「それじゃあ追いかけても無駄だろ」

「わかんないよ。全力で伝えれば、伝わるかもしれない」

「悪あがき」

「あがきたいんだよっ……」


 手の届かない彼が、
 見えないところに行ってしまう前に――。


「酷いよ。大我。……どうして、勝手に、食べちゃうかなぁ。……まだ、食べないで欲しかった」


 大我が目を見開く。


「明日渡そうと思ってたのに」

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