ARRIA
「ではお願いします。母さん、行って来ます」


緊張の余り言葉も出ない母さんにそう声をかけて、案内されるまま一番大きなバクが引く荷台に乗り込んだ。


「この者が中に入ります」


そう紹介されてあたしの次に乗り込んできたヒジュラは一転して、細くまだ幼さが残る顔立ちをしていた。


「道中何かあればどんな事でも申しつけ下さい」


アジリまでは多分一時間以上かかるだろう。
間がもつか少し不安になってしまう。


さっきのヒジュラのとても大きなかけ声が聞こえると荷台が少しずつ動き出した。

乗り口の幕を少しずらして身を乗り出して母さんを見ると、まだ緊張してる様だった。

「行ってきます母さん!」

あたしの家から風景が流れだして街を出るそのスピードに合わせて鼓動が早くなる。


少しだけ流れていく街並みに愛おしさを覚えたけれど、街の入り口を抜けて草原が一面に広がると心が解き放たれた様な、意識が身体を突き抜ける様な気がした。



< 12 / 71 >

この作品をシェア

pagetop