ARRIA
変わらないものの変遷、その速度
どこからか歌が聞こえる。


表を歩く子供達の歌かシデンの草原を往くヒジュラの歌か解らないけれどスープがコトコト煮立つ音に紛れて確かな旋律が聞こえてくる。



「あんたも偉くなったもんだ。シデンにはまだ行かなくても良いのかい」


「・・・おばあちゃんもあたしを羨ましく思う?」



微かにだが途切れずに続く、どこかで聞いた事がある様な旋律。


だけど思い出せない。


「そりゃそうさ。私だけじゃない、アーリア全体があんたを羨ましく思い、祝福している」

「早起きでシデンに薬草採りに行かなくていいしね」

「馬鹿だね、そんな理由じゃないだろう。クグニ神があんたを望まれている。これ以上どんな名誉がある?海の向こうにも無いね」



海の向こうなんて行った事も無いくせに。


< 2 / 71 >

この作品をシェア

pagetop