ARRIA
原色の世界、そこには何も無くただ風だけが吹いていた
長い螺旋階段を降りている。たたでさえ広大なのにこんなに深い地下まであるなんて一人なら確実に迷ってしまう。
「足下に気を付けて下さい。もう少しで着きます」
ヒジュラはあたしの歩に合わせゆっくりと前を行く。口には出せないけれど暗い所はすごく苦手なので、この背中がなければあたしはその絶望に動けなくなってしまう。

「着きましたよ。この中です」
もうすぐと言われてからどれ位歩いたのだろう。何十歩かに一回振り返ってくれる背中だけを頼りに、気づけば遙か上に僅かに回廊の青い光が見えるか見えないか位まで下に降りていた。
そこには、身長の三倍はあるとても大きな扉が燭台の赤い炎に照らされていた。圧倒されたのは木造の扉の大きさでは無くそこに刻まれたものだった。

全面に緻密に刻まれているのは炎だろうか、流線型の紋様。扉の中央には…あった。
バクから降りて見たのと同じ姿のクグニ神とイシカ神が左右半分ずつに描かれている。

少し分かった気がする。祭壇の像はまだ比較的新しく見えた。この扉もそうだけれどアジリに至る道にあったそれは明らかに古いものだった。
年月を経て、昔からある信仰が形を変えて今に伝わっているのでは無いだろうか。
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