ARRIA
けれど人の営み、人の心の依り所である、変わらないはずの信仰が変わるとゆうのはどういう事なのだろう。もしくはクグニ神とイシカ神の造形のみが変化して伝わっているのかもしれない。ただ何となく、年月をかけた緩やかなものでは無く突然の変遷の様な気がする。それも最近の。

「では…開けますよ」

ヒジュラが握った扉の引き手、ちょうどクグニ神とイシカ神を結ぶ中央部分には、一つ目の球体が刻まれていた。これは何なのだろう。
想像と好奇心が止まらない。中にはきっと読みたい本が、小さい頃から考えていた事の答えが無数にある。

ゆっくりと重々しく開かれた扉の向こうには、舞い上がった埃に混じる草紙の匂いと、暗い、暗い闇が広がっていた。

「明かりを…僕はここに来るのは二度目で…普段でもほとんど立ち入る者はいないのです」
顔近く迄舞った埃を手で払いながらヒジュラが室内の燭台に明かりを灯していったその間に書庫内を見渡した。とても広い。何千、何万の本がある。
吸い寄せられる様に近くにあった一冊に手を伸ばした。

「シデン」

と、読めるのだろうか。あたし達の文字とは少しだけ違う書体で表紙に綴られていたその本には、花や獣の図が描かれている。
< 34 / 71 >

この作品をシェア

pagetop