ARRIA
走り書きで、どの図の脇にも丁寧に書かれているのは注釈だと思う。
別の本も見てみよう。
「 ガ 」

表題の文字は褪せて消えてしまっていてかろうじて一文字読めるだけだ。これもかなり古い。

今度は全く読める字では無いし所々破れている。けれど後半の頁に、何かの地図が書かれていた。
それはどう見てもアーリアじゃなかった。これが本当に地図で、何かの創作ではないのなら、アーリアの他にも世界が在る可能性がみえる。
街のほとんどの者がシデンの草原より先へ行く事はない。
それがアーリアの戒律だし、当然破ればクグニ神の名の許に死刑相当のアジリの罰がある。
だから街の人間にとってはアーリアが世界の総てで、人の営みは街とアジリの内に収斂される。あたしはその事にずっと違和感があった。
人に話せば笑われるか呆とされたけれど、変わらない日常に飽き、他人と違う人生を歩みたい気持ちに気づいた時、在るか無いかも分からない外の世界に想いを馳せて憧れるようになっていた。
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