ARRIA
自分が立っているのか座っているのかも分からない。

「イシカの供議」

何か言葉を発したかと思うと、目の前で球体は震え出した。
残像が次第に大きくなり、それは視界の全てを包んだ。

あたしは夢を見ているんだ。思い切り目を瞑り、何故かはっきりした意識でそう思った。

そしてゆっくりと目を開いた時、ああ、やっぱり夢を見ている、と思った。

あたしは空に浮いていた。遙か下には地平まで黄金色の雲が敷き詰められている。気持ち良い位の吹き抜ける風を感じているけれど、現実にはありえない事が起きていると、夢である事を認識してからかまだ冷静に思考を働かせる事ができた。
それでも足は竦んでしまっているので、肩だけで周りを見回した。
さっきは青白かった表面が血の様に赤くなった球体がそこにいた。

何度か聞いた旋律が女性の声で聞こえてきた。はっきりと聞こえる。これはあたしの声だと思う。

「シデンの民がオマエの在処では無い。わかるか」
「わかるか。オマエは世界の王として産まれ落ちた。理解せよ」

表面の顔が次々と喋りだした。低いけれどとても綺麗な声。
「…あっあなたは…一体何…」

「オマエを連れていこう」
< 37 / 71 >

この作品をシェア

pagetop