ARRIA
遙か地平に浮かんでいた青白い月が凄い速さで大きくなり始めた。

やがてそれが景色を飲み込んだかと思うと、中心に点の様な穴が空き、その穴が次第に広がって更に全てを飲み込み、世界が大きく歪んだ。

気づいたら目の前には不思議な世界が広がっていた。

灰色の風景がどこまでも続いている。

四角に切り取られた石の様な建造物が無数に空に向かって伸び、所々その隙間を黒や白など様々な色の何かが地を這う様に走り回っている。

黒い煙を雲の高さまで吐く建造物もある。焦げた匂いもする。無機質で不気味な光景だった。

「月がこの星を回る年月を数えなくなった頃、シデンは燃え尽きて神は死ぬ」

「どういう…シデンが燃えるって」

「オマエが命を捨て、閉ざされた小さな島はやがて淘汰され、万物の霊長は増加が為に山を枯らし毒を撒き砂糖の山を築く」

「あたしが命を捨てる…?」

「浅はかな不文律に誑かされ無駄に死ぬ。わかるか」


一体さっきから何の話をしているのだろう。形容できない不安がまとわりつく。…この感じは経験がある。いつだったっけ。


「イシカは」
「歪められ」
「沈黙した」

「オマエの命など」「誰が望むか」

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