ARRIA
気がついたら薄暗い書庫だった。何故か僅かに足が竦んでいる。
「ああここに…すごい量の本でしょう、好きなものを手に取って下さい」

ヒジュラはこの広い空間であたしを探していたのか、少し汗をかいていた。

「あっはい…」

何か奇妙な夢を見た気がする。夢とゆうには生々し過ぎた様な気もするが何故か思い出せない。

そうだ、それよりせっかくなのだから本を読もう。いつの間に取ったか、手に持っているこの本を開こう。

「アーリア千年記」と題されたその本はかなり古いけど、ほとんど読める文字だった。表題にも少し惹かれる。近くの椅子に腰をかけて読んでみよう。

《海の彼方から来た新しい人、アーリアの大地に立つ。此処には何もなくただ風だけが吹いていた。空腹が為に獣が野を駆け原始の花が咲き誇る。皆々が飢え、或いは深傷が為に死につつある。混沌に生きるも良いだろう。調和に生きるも良いだろう。只、共に死ぬには若過ぎた。あの女と共に大地に根を張ろう。獣ごと草原を焼き尽くし、倒れゆく皆々の肉を喰らわせ此処に国を創る。其処で神になろう。もう二度と蹂躙されぬ為。炎降る。踵を鳴らし海から新しい人。炎降る。》


あたしは本を置き深く目を閉じた。
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