ARRIA
手を縛る鎖、足を打つ鉄、口を塞ぐ鉛
日が落ちてもシータが帰ってこない。お母さんが家を飛び出し、街中に明かりが灯され皆で捜索が始まった。
家を出たあたしの所にジッタおばあちゃんが駆けつけて来た。
「…今若い男達が何人かでシデンに出ようとしている…明日はアンタの儀式だってゆうのに…あっ何処に行くんだ」

シデンに出ようとしている。あたしはその言葉だけを聞いて、まだ何か話しているおばあちゃんを後にして街の入り口へ歩を進めた。
途中、獣を狩る為の槍と炎を灯した松明を手にした男の人が駆け足であたしを追い越して行った。

街の入り口には同様の装備をした人達を含み人だかりができていた。お母さんもいる。

「まさかとは思うが…シデンから帰っていないならどこかで怪我をしている可能性がある。治療の準備だけはしといて下さい。他に戻らない者は?」
場を仕切るこの人は多分ヒジュラだ。何度か見た事がある。「今日の番はシータだけだ。付き添いのヒジュラがいるはずなのに…」

「アンタは家に戻りなさい。明日がどういう日なのか分かっているでしょう」

お母さんは余程神経を使っているのだろう、疲れきった顔をしている。

「あたしも行きます。巫女の命令です、ヒジュラ様」
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