ARRIA
「アンタ何を…」
あたしの言葉に必死の形相でお母さんが割って入るが、ヒジュラが少し考えた後それを制した。
「分かりました。ただし必ず私から離れないで下さい」

そうしてあたしとヒジュラ、三人の街の者が二組に分かれバクに跨り街を出た。
夜の草原は初めてだ。妙に明るい満月が辺りを照らしている。

「ヒジュラが一人付いている。まさか獣に襲われたなんて事は無いと思うが」

アジリに行った日以来のシデン。今は、この草原が焦土になるイメージが浮かぶ。

「街にいなければここしか無い。大丈夫、必ず見つけますよ」

あの書庫で知ってしまった。あたし達はどこから来てどこに行くのか。

指笛が夜の草原に響いた。あの三人が何か見つけたんだ。
「シータがいたのか?いきましょう」
バクの踵を返し音のした先には三人の人影と誰か倒れているのが見えた。

近づくにつれ近づきたくない気持ちが高まる。三人の様子を見ても何となく分かる。倒れているのはきっと死体なんだ。
恐らく街から持ってきたのだろう、槍が深く腹辺りに突き立てられている。シータと共に街を出たヒジュラだ。

「巫女様は来ちゃ駄目だ…死んでいる」三人の誰かが声を裏返らせてそう叫んだ。
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