ARRIA
「これは…シータは?きっと近くにいるはずだ、探せ」
そう叫ぶヒジュラは同僚の死に動揺している様だ。自分が死体を前にしてそう様子を冷静に見ていられるのは意外だった。
シータが刺した可能性もあるのに。

それから二時間程、辺りを捜索したけれど何も発見は無く、死体をバクに乗せあたし達は一端街に戻った。事情を聞いた母さんはその場に崩れ落ち、誰もが11歳のシータの安否を心配した。
あたしは遠くからだけど初めて死体を見て少しだけ気分が悪くなった。シータの事は気になるけれどあたしが騒いでもどうにもならない気がした。
街の騒然を余所に、あたしは一人家に戻り横になった。

まだ声が聞こえる。死体で見つかったヒジュラを悼む声。いなくなったシータを探しに一人でシデンに出ようとする声、それを制止し朝を待てとゆう声。

騒がしい。あたしだって明日の今頃には儀式を終えて山に登り、日の出の頃には死ぬってゆうのに。

あたしが死ぬ。

死。腹に突き刺さる槍。

体が大きく脈打った。

焼け野原に槍を突き立てられた死体が横たわる。

そうか。ずっとまとわりついていた、形容できない不安が何であったのか分かった。

< 42 / 71 >

この作品をシェア

pagetop