ARRIA
いつの間にか眠っていたのだろう。朝になっていた。
あたしの脇で母さんが、座り込んであたしの手を握り眠っている。
シータはきっと見つからなかったのだろう。このまま見つからなければ母さんは一人になってしまう。
その事を思うと胸がチクリと痛むけれどもうあたしは迷わない。あんなに怖かったのに今はもう何かが突き抜けた様に迷いが無くなった。

母さんの肩に毛布をかけそっと家を出ると世界は希望に満ちていた。


太陽が眩しく空も街も花も照らし、川のせせらぎが幾つもの想いや時間さえも洗い流してくれている気がする。

けれどもやっぱり往来の人達だけはどうしても記号に見えて、何だかおかしくなって少しだけ笑ってしまった。



何にも縋らず、頼らずに生きて行くには余りにこの街は小さ過ぎたんだとあたしは思う。

海の向こうにはきっと、必ず、幾つもの世界が広がっていて幾つもの物語がある。



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