ARRIA
「巫女がどれだけ偉いの…あなたの弟を殺してやる…」

まるであたしにでは無く自分に言い聞かせる様に、きっと街中に響いてるだろう大声で女は叫んだ。

周りの人達は数人がかりでも手加減できないと気づいたのか、覆い被さる様に制している。

弟がどこにいるかなんてあたしが聞きたい。


喉が詰まり、この場に倒れ込んでしまいそうな程に体が熱くなった。

「早く行きなさい、家に戻りなさい」

ジッタ婆の声だったと思う。誰かに強い力で引っ張られ、その場を後にした。



結構歩いたと思うけどまだあたしに向けた声が聞こえる。


吐き気がする。


あたしは口を押さえジッタ婆に支えてもらいながら、少しでも離れようと竦んだ足を進めた。



「大丈夫かい。あの女…頭がどうかしてしまったんだ」

ジッタ婆の家の軒先に湧く水を飲み、何とか少しだけ落ち着く事ができた。

「…もう良いでしょう。何故シータが殺したと…」


少しの沈黙。
自分が苛立ち始めているのが分かる。


「あの子は…様子がおかしかったらしい…」


半ば諦めた様な声で沈黙を破る答えが返ってきた。


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