ARRIA
怪物の口の中では二人の男の人があたしを待っていた。

全く同じ容貌で、頭から足下までを包む白い装束を纏っていた。
二人とも青白い球状の彫刻か何かを両手に抱えている。



「クグニの怒りが」「イシカの叫びが」
「災厄は近づいている。未曾有の炎が降る」
「山は崩れ川は毒を流し獣は焦げた骨のみを残す」


司祭らしい二人は歌う様に交互に声をあげた。


「おお…クグニの巫女が来た」
「おお…イシカの巫女が来た」


二人の司祭は手に持っている彫刻を頭上に掲げ、奥へ歩いて行く。

ついて来いとゆう事か。だけど父さんが見当たらない。


「彼らはサジニです。我々の同様にクグニ神に名前も命も捧げた者。儀式は全てサジニが執り行います」

「アグニ様、あたしの父はどこに…弟もこちらに来ていませんか」

「あなたの父はまだ戻りません。特使なのです。弟様は…来ていません。迎え無しでは街から来れる距離では無いでしょう。何故こちらに」


アグニ様は迎えのヒジュラと同じ言葉を口にし、目が全く笑っていない笑顔をあたしに返した。



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