ＡＲＲＩＡ
ゆっくりと頭を上げ、あたしは振り返った。


ズキン、と頭に痛みが走った。


何だろう。


「祈りが終わりました。儀式は終わりです」

アグニ様は再びあたしに深い礼をしてそう言った。


あたしは何もしなかったけどこれで終わったんだ。後は山に登るだけだ。


二人の司祭があたしの所に寄ってきて、片手ずつあたしの腕を優しく掴んだ。


「儀式は終わりました」
「儀式は終わりました。」



何故同じ言葉を繰り返すのだろう。




儀式。
終わり。



顔を上げるとあたしの体は恐怖で固まった。


司祭の顔が装束から覗き見えた。

皺だらけで目は落ち窪んでいる。
なのに二人は全く同じ顔をしていた。




思わず腕を振り放そうとするけれど僅かにも動かない。



思い切り体ごと振り解こうと力を入れても腕だけが動かない。



怖い。



助けを求めようとアグニ様を振り返ると、鏡を掲げていた。


鏡にはあたしの顔じゃない顔が映る。



眼球が血の様に真っ赤に染まり、今にも飛び出しそうになっている。


目の前が砂嵐で埋まったかと思うと三人があたしを見下ろしていた。




真っ暗になった。



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