ARRIA
再び無数の鉄が鳴る音が響き始めた。

その音を聞きながら夜空を見上げるのは意外と心地良かった。

あの光る星の一つ一つに世界があって、そこにもあたし達が全く同じ様に存在していると聞いた事がある。

そうだ。昔、父さんがあたしの枕元でそう言ってたんだ。
光り輝いているのは鏡と同じだからだって。
遙か上にあるけれど鏡と同じだから、向こうの星から見るとあたし達の星が上空にある様に見えるらしい。

確か行った事があるのか尋ねたら何て答えられたんだっけ。


鏡と同じ世界なら、あっちのあたしとこっちのあたしは目が合っている筈だ。

「こんばんわ」

遠い頭上からそんな言葉がかけられた気がしてあたしも挨拶した。


真横を歩くヒジュラが驚いてこっちを覗いたけれど、何か呟いてまたすぐに前を向き直した。


この人達はそんな事は何も知らないのだろうと勝手に決め付けてそう思うと何だか愉快になって笑い声が出てしまった。

「…狂った」

誰かがポツリと言った。

それもまた愉快だった。


あたしを運ぶ動きが止まった。


思い出した。あの時父さんは確かに言った。こっちとあっちで人は転生を繰り返すから、死ぬ事は何も怖くないと。
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