ARRIA
砂糖の山、その頂き
普段とは違う装いで自分を着飾るとそれだけで、蜜を前にしたバクの様に心が躍ってしまう。


母さんがただ一度結婚する時だけに着た巡礼服に袖を通しながら、普段の麻とは違うその肌触りの良さに感動してしまった。


「早く準備しなさい、歩く時は服の裾を踏まない様に」

「何であたしより母さんが緊張するの」
もうすぐアジリからあたしを迎えにヒジュラがこの家に来る。

普段なら絶対にアジリに踏み入る事はできないからあたしも緊張していない訳ではないけれど、期待感の方が大きく上回っている。


父さんにも会えるかもしれない。


「シータはまだシデンから戻ってない?」


少しだけ弟に対して申し訳無くなって、いつ帰ってくるのか気になった。


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