ロベタサード
津田君と富田さん
どうしよう…
テスト一週間前の金曜日の放課後、私は教室にいた。
昨日、津田君に貸した地理のノートを返してもらうのを忘れてしまった。
地理のテストは休み明けの月曜日だから、今日返してもらわないと勉強ができない。
「……どうしよう、」
津田君と仲がいい人は…2年生の桜木先輩と大島先輩、
先輩との接点なんてない私はどうしたらいいのかわからなくなった。
とりあえず、家に帰ろう。
そう思って教室を出た。
土日があるから地理の勉強はまったくといっていいほど手をつけてなかったから、危ない。
ポケットに入っていた携帯がなった。
「…誰だろう?」
通話ボタンを押す。
「もしもし?」
少しの沈黙の後、
『富田さん?』
「…はい。」
聞き覚えのある大好きな声。
『高橋に番号聞いた。あの、地理のノート俺持ったまんまで・・・』
…やばい、
体中の温度が一気に上昇する。
聞き惚れてしまうほど大好きな声が、耳元で聞こえる。
『…富田さん、聞こえてる?』
「はいっ!き、聞こえてます!!」
『…っ、』
……今、微かにだけど津田君が笑った気がした。
その後あたしはなんとか意識を保ち、明日のお昼に待ち合わせをすることにした。
電話のあと、携帯を握り締めたままその場からしばらく動けなかった。