夏国 なつぐに
いくじなしだ。
私、いくじなしだ。舜と青山さんのラブシーンを見て、わざとらしく隣を走ってきた。
舜は、本当に変わった。引っ越してきた頃より、うんと私より堂々としていて、青山さんにも似合う明るい男子になった。
私は、帰るなり水道水をコップに注ぎ、一気に飲み干した。そして、庭先で延々と、隣の和室でおばあちゃんがマリア様の立像に祝詞のように聖書を読んでいるなかで、咽び、声を殺して泣いた。
近所の親友、朝子ちゃんが家を訪ねてきたのは、そのあとで、宿題の中学生になったらしたいこと、を、文集にするから書いてこなければならず、内容を気にして、家まで来てくれた。
朝子ちゃんは、お母さんが出したホットミルクにシナモンシュガーを溶かして、すこし、チョコレートを噛った。
「知らなかった。舜くんが、好きなんだ?」
「え?」私は、吃驚してノートを閉じてしまった。
「だって、じゃなきゃ、今も動揺しないよ。舜くん、変わったね。青山さんって、あの3馬鹿トリオふったんだ。前の彼氏もサッカー部、部長の田辺でしょう?田辺、別れたんだー。私とか、皆は、田辺がいいな。性格いいし。」
「舜も、いいよ?」
朝子ちゃんは、ケタケタ笑って、私を指差した。
「あんたの、に、しなさいよ。」
「男子を陰から自分のもの!って言って何が悪いの?話す時くらいわたしの舜くん、に、しなさいよ。いわば、ファンなんでしょ?で、ゆくゆくは自分の彼氏に本当にしちゃいなさい!」
「朝子ちゃん~。無理だよ。舜変わったもん。明るくなったし。格好よくなった。」
「認めてるじゃん、舜くん好きーって。ばれたねー、朝子にばれたねー。」
朝子ちゃんは、茶化していたけど、私はどきどきしていた。
舜が、なんで、あれ?
なんで、私、舜を呼び捨てで平気なの?…恥ずかしい気持ちが緊張してきて、文集の話が出来なくなりそうだった。
「でも、青山さん、他校なの?」
「うん?うん。」
「取らないの?舜くん。」
そんな気持ちなかった。だから、朝子ちゃんに、「それじゃあ、嫌な女みたい。」と、わざとらしく明るく話した。
まるきりそうなんだけども、ライバルにはなれないし、かといって、取り合いも嫌だ。
朝子ちゃんは、その夜、文集にこんなことを書いていた。
「大好きな、みんなが、好きです」
普通の、台詞なんだけど、舜が読むなんてこと考えたら、どきどきして書けない。緊張して、言えない。
でも、朝子ちゃんは、普通に格好良くて、益々大好きになった。
私は、文集に「みんな、ありがとう。大切な、日々でした。」と、隣に書いた。
そして、マグカップにチョコレートを積めて朝子ちゃんに教わって、マフィンを焼いて夜が過ぎた。
チョコレートマフィンは、朝からおばあちゃんが食べてしまって、お礼に、と、おばあちゃんからお駄賃をもらえた。
そのお金で、いちごミルクキャンディを、リベンジに買って学校へと向かった。
ざわざわとしていて、クラスが騒がしかった。
教室の扉を開けると、青山さんが、泣いているのが目に入った。
その真後ろに、舜が座っていた。
冷たく、頬杖をついて、下を見つめて。
私、いくじなしだ。舜と青山さんのラブシーンを見て、わざとらしく隣を走ってきた。
舜は、本当に変わった。引っ越してきた頃より、うんと私より堂々としていて、青山さんにも似合う明るい男子になった。
私は、帰るなり水道水をコップに注ぎ、一気に飲み干した。そして、庭先で延々と、隣の和室でおばあちゃんがマリア様の立像に祝詞のように聖書を読んでいるなかで、咽び、声を殺して泣いた。
近所の親友、朝子ちゃんが家を訪ねてきたのは、そのあとで、宿題の中学生になったらしたいこと、を、文集にするから書いてこなければならず、内容を気にして、家まで来てくれた。
朝子ちゃんは、お母さんが出したホットミルクにシナモンシュガーを溶かして、すこし、チョコレートを噛った。
「知らなかった。舜くんが、好きなんだ?」
「え?」私は、吃驚してノートを閉じてしまった。
「だって、じゃなきゃ、今も動揺しないよ。舜くん、変わったね。青山さんって、あの3馬鹿トリオふったんだ。前の彼氏もサッカー部、部長の田辺でしょう?田辺、別れたんだー。私とか、皆は、田辺がいいな。性格いいし。」
「舜も、いいよ?」
朝子ちゃんは、ケタケタ笑って、私を指差した。
「あんたの、に、しなさいよ。」
「男子を陰から自分のもの!って言って何が悪いの?話す時くらいわたしの舜くん、に、しなさいよ。いわば、ファンなんでしょ?で、ゆくゆくは自分の彼氏に本当にしちゃいなさい!」
「朝子ちゃん~。無理だよ。舜変わったもん。明るくなったし。格好よくなった。」
「認めてるじゃん、舜くん好きーって。ばれたねー、朝子にばれたねー。」
朝子ちゃんは、茶化していたけど、私はどきどきしていた。
舜が、なんで、あれ?
なんで、私、舜を呼び捨てで平気なの?…恥ずかしい気持ちが緊張してきて、文集の話が出来なくなりそうだった。
「でも、青山さん、他校なの?」
「うん?うん。」
「取らないの?舜くん。」
そんな気持ちなかった。だから、朝子ちゃんに、「それじゃあ、嫌な女みたい。」と、わざとらしく明るく話した。
まるきりそうなんだけども、ライバルにはなれないし、かといって、取り合いも嫌だ。
朝子ちゃんは、その夜、文集にこんなことを書いていた。
「大好きな、みんなが、好きです」
普通の、台詞なんだけど、舜が読むなんてこと考えたら、どきどきして書けない。緊張して、言えない。
でも、朝子ちゃんは、普通に格好良くて、益々大好きになった。
私は、文集に「みんな、ありがとう。大切な、日々でした。」と、隣に書いた。
そして、マグカップにチョコレートを積めて朝子ちゃんに教わって、マフィンを焼いて夜が過ぎた。
チョコレートマフィンは、朝からおばあちゃんが食べてしまって、お礼に、と、おばあちゃんからお駄賃をもらえた。
そのお金で、いちごミルクキャンディを、リベンジに買って学校へと向かった。
ざわざわとしていて、クラスが騒がしかった。
教室の扉を開けると、青山さんが、泣いているのが目に入った。
その真後ろに、舜が座っていた。
冷たく、頬杖をついて、下を見つめて。