婚姻届と不埒な同棲
このエピソードは深く記憶に残っていた。

だから、拓斗くんが私と婚約すると言い出したとき、真っ先に頭をよぎった。

1つ目が、美琴ちゃんがいること。
2つ目が、飯盛家の嫁のこと。

飯盛家に嫁いだら、家事を完璧にこなさなきゃならない。
練習したところでたかが知れてる。

それに、今の仕事が好き。辞めたくない。
旦那様の会社では働かせてもらってるんだから、辞めさせるなんて造作もないことだろうけど。

…そんな、誰にも言ってこなかった悩みを、お酒の力を借りて赤裸々に打ち明けたんだろう。

「知らなかったなー。
萩花がそんなことを悩んでたなんて。

でも心配しなくていいよ。
大体、母さんだって家事できないし、若い頃は父さんと一緒に働いてたんだ。
その条件、母さんがふざけて言ったのを、美琴が本気にしたんだろうな」

「え、そうなの?」

…それに振り回されてた私って何なの。

でも、ちょっとホッとしたかも。
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