婚姻届と不埒な同棲
「大丈夫?」

隣から心配そうな声がする。

「うん、何でもないよ」

やっぱり変わってないな。

拓斗くんは自分勝手に見えて、実は人の感情の揺れにすごく敏感なところがある。
そんな彼の心遣いに私は数えきれないくらい救われてきた。

何気ない彼の言葉に、嬉しくなったり楽しくなったり、どうしようもなく心が動くことがあった。

それはこの家の人たち全員に言えることかもしれない。
旦那様にも早苗さんにも、それに、私をメイドとして仕事を1から教えてくれた使用人の皆も。

誰も私を邪魔者扱いしなかった。心の拠り所となってくれた。
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