婚姻届と不埒な同棲
ただ、度肝を抜かれたのはその変更先。

不安がる両親や、ビビる私の制止を振り切り、志望校を最難関レベルまであげた。しかも滑り止めは受けないという。

怖いもの知らずというのか、無謀というのか。
拓斗くんは、時々こんなぶっ飛んだことをしてしまう。

年が明けて受験日が近づいてきた。

この時期は、両親のことを思い出して、気分が落ち込んでしまう。
今は拓斗くんにとって大事な時だというのに。

「もうすぐ命日なんだってな」

何の脈絡もなく、ぽつりと言った。

「…なんで、知ってるの」

「それくらい知ってる。

俺は大丈夫だから。
萩花に心配されなくても、余裕で合格してきてやるよ」

なめてるな。

「大学受験ってそんな簡単じゃないのよ」

「わかってるよ。大丈夫だって。
萩花のスパルタのお陰で学力もメンタルも鍛え上げられてますから」

ついつい笑ってしまう。
そう言う拓斗くんは、自信に満ち溢れていて、とても頼もしく見えた。
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