婚姻届と不埒な同棲
命日のお墓参りも無事に終えた数週間後。

私たちは神に祈る気持ちで拓斗くんからの連絡を待っていた。

緊張で静まり返った部屋に、旦那様の携帯が震えた。

「き、来たぞ」

その場にいる早苗さんも、他の使用人も全員が息を飲む。

「はい。こちら、父さんだ」

緊張のあまり、妙に渋い声を出す旦那様。
いつもはそんな出方しないのに。

『…本当に父さん?』

電話の向こうからは拓斗くんの声が漏れて聞こえてくる。
第一声で実の父を疑われてますよ。
< 31 / 139 >

この作品をシェア

pagetop