婚姻届と不埒な同棲
絶対に嫌だ。
なにがなんでも嫌だ。

「断れる立場なの?

まさか、まだ料理できないとか?」

…完全に馬鹿にした笑い。
これは聞き捨てならない。

「…。

…できるし」

「今間があった。
嘘ついただろ?」

「お弁当は、たくさんの種類を作らなきゃいけないから大変なの!」

もっともらしい言い訳で、どうにか乗り切ろうとする。
お弁当作りなんて絶対に阻止せねば。

「わかった。
じゃ、今日の昼ごはん作って。
それならいいだろ」

う…。
まさか、最初からそれが狙いだったの?

巧妙な手口を使ってくるようになった。
侮れない。

でも仕方ないか。
元をたどれば自分の落ち度。
それに、お弁当よりはまだマシだ。

「わかった」

前向きな気持ちにはなれないけど、これで許してもらえるならやるしかない。

そう思って、拓斗くんと約束をした。
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