婚姻届と不埒な同棲
「そんな人いない…」

「だろうね」

安心したような顔。
そうすんなり納得されると癪だな。

で、さっきのは何?
からかわれたの?

問いただしたいけど、今から掘り返したら私が持たない。

落ち着け…。
いいから一旦落ち着こう。

…あー!
落ち着こうと思えば思うほど心臓の高鳴りが際立つ。
頭の中がうるさくなる。

1番混乱させてる理由、それは…。

唇が離れてから最初に見た拓斗くんの顔は、大人っぽくて色気があって。
そしてその目は私だけを見てくれていた。

熱い意思を持ったその目を見つめ返したとき、ぎゅっと胸が締め付けられた。
どうしてかわからないけど、泣きたくなった。

その瞬間、最後の砦が壊された音がした。

< 69 / 139 >

この作品をシェア

pagetop