婚姻届と不埒な同棲
ん?
歩きだしてすぐに、揉める2人の影に私は目を細めた。

「言ったのよ!
大きくなったら美琴と結婚してくれるって!」

美琴…?
その名前に記憶のパズルが一気に完成した。

「言った記憶なんてねーんだよな…。
普通、そんな約束しねーって。だって俺その時からずっと…」

「言ってたよ」

いつしか私は、おぼつかない足取りで2人の喧嘩に首を突っ込んでいた。

え?という顔で両者がこちらに顔を向ける。

1人はまだ幼さの残る女性。
もう1人は、出来れば会うのを避けたい相手、拓斗くんだ。

拓斗くんは、はっと目を大きくして驚いている。

私はというと、足元だけじゃなくて頭もふらふらしてきた。
動いたせいでお酒が回ったのかな。

今なら空でも飛べそう。
怖いものなんて何もない。
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