『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
不思議なことに誰も私に話しかけてこない。
まるで透明人間にでもなった気分。
オホホ、アハハと和やかに笑い合うおかしな四人を、どうして?と思って見ていると、やっと涼さんが私を見下ろした。
「あれ? 小春? お前、どうしてここにいるんだ?
しかも床に座り込んで、まるで土下座しているような……」
その言葉に今まで頬を赤らめていた暮間さんが、青くなった。
慌てて言い訳し始める。
「これは……アレなのよ! そう、アレよアレ!
私、真珠のピアスを落としてしまって、困っていたら親切なあなたの奥さんが探してくれたのよ。
そうよね? ね?」
「へ? ええと……そ、そうです!
真珠のピアスですよね。あれ?どこいったのかな〜?」
どうやら暮間さんは、私に土下座させていたことをイケメン達には知られたくなかったみたい。
必死の形相で「そうよね?」と念押しされては「違います」とは言えず、話を合わせた。
床に這いつくばってキョロキョロと真珠のピアスを探してみるけれど、落ちているはずがない。
だって真珠のピアスは彼女の両耳で輝いているから。
「僕達も探しますよ」
そう言ったのはイケメン俳優の大栗旬さん。
暮間さんが焦ってそれを止めた。
「い、いいのよ〜。たった10万円の安物だもの。
また新しい物を買えばいいだけだから気にしないでちょうだい。
あら、大変。もうこんな時間。次の仕事が入っているのよ。ね、マネージャー?」
「いえ、今日はこの現場でおしまいで……」
「お黙りっ‼︎
あら、やだ私ったら、オホホ〜。
皆さんごめんなさい。ゆっくりしてと言いたいけど時間がなくて」
ボロが出る前にまずい状況を切り上げたいと思っているのか、暮間さんは私達を追い出しにかかった。
それを待ってましたとばかりに、涼さんが私の腕を取って立ち上がらせる。