『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
無言で睨んでくる彼に、焦って弁明した。
「も、もちろん涼さんにも感謝していますよ!
すっごく、すっごく、ものすごーく!」
「へぇ、俺“にも”?」
「あっ、にもじゃないです!
えっと、涼さんには? 涼さんだけ? 一番涼さんに?」
アワアワして言い直していると、端正な顔がゆっくりと近づいてきて耳元でこう言われた。
「ったく、お前は……。
どれだけ妬かせれば気がすむんだ。
金輪際、俺以外の男を見るな。他の男をカッコイイと言うのも禁止だ。
俺はお前にそんな褒め言葉をもらったことがないぞ? 愛の言葉も一度も言われたことがない」
「えっ? 嘘っ?
まさかそんなことは……」
そんなことはないと思ったけど、よく考えると確かに言葉に出してはいないかも。
心の中で涼さんが世界一カッコイイと思っているし、毎日「大好き!」と叫んでいるけど。
耳元の彼の声に艶が増す。
「言えよ。俺を愛していると」
「こ、ここで?」
「今、ここで」
目だけ動かし、廊下の左右を確認する。
微かな話し声は聞こえるけど、それはズラリと並んだドアの内側から聞こえるもの。
幸いにも廊下は無人で、私達の様子は誰にも見られていなかった。