『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
春の日に、君に感謝する
◇◇◇
結婚から一年半ほど経ったある日のこと。
季節は春だが、まだ朝日の上らない早朝は肌寒く、クシュンとくしゃみをするパジャマ姿の小春を、風原は心配した。
「起きて来なくていいから、布団に入ってろ」
「でも、旦那様を見送らない妻になりたくないんです」
「お前に貞淑な妻は求めてない。風邪の時はとにかく寝てろ。といっても……お前も仕事があるけどな」
風原は早朝放送のモーニングウインドのメインキャスターを変わらず勤めていて、小春も午後の情報番組のレギュラーを続けている。
出勤は風原の方が四時間も早く、小春はまだ寝ていてもいい時間なのに、こうしてパジャマのままで見送るのが日課になっていた。
しかし、ここ数日、小春は三十七度前半の微熱が続いていた。
体が少々熱いという以外、本人は至って元気だが、風原は心配して病院に行くように度々言っている。
今も玄関で靴を履きつつ、「今日こそ病院に行けよ。行かなかったらお仕置きするぞ」と妻に言う彼。