『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
喧嘩にはならなかったけど、涼さんを不機嫌にさせてしまったのは確実で……。
日曜日の今日、彼も別の収録が入っていて、だいたい同じ時刻の出社時間なのに車で送って貰えなかった。
出社してプロデューサーさんと打ち合わせしている最中も、心はどうしよう……と落ち着かない。
生タイフーンを見られる興奮はとっくに消え去り、頭は涼さんのことでいっぱいだった。
タイフーンはかっこいいと思うし見たら「キャー!」となってしまうけど、それは決して恋愛感情ではない。
私が愛しているのは涼さん一人。
それは十分に伝わっていると思ったからあんな態度をとってしまったけど、よく考えたら嫌な気持ちがするよね……。
私だって彼が女優の誰それさんとの仕事が楽しみだと言われたら、不愉快になるし悲しくなってしまう。
言ってはいけないことを言ってしまったと、後悔してももう遅い。
どうしよう……。
なるべく早く謝った方がいいよね……。
でも、昨夜も今朝も私が話しかけようとすると、プイッと視線を逸らされ話しかけるなオーラを出されるから、中々謝るチャンスがなくて……。
時間になり収録スタジオに入った。
一応の笑顔を作っていても、心は大きくへこんでいた。
台本を手にディレクターさんと最終確認をしていると、後からスタジオ入りしたタイフーンのメンバー5人が私に挨拶してくれた。
「風原小春アナウンサーさん、初めまして!」
「僕ら結構アドリブ入れちゃって、司会者泣かせで申し訳ないんですけど、よろしくお願いします」
「小春さんと呼んでもいいですか? 風原さんだと、旦那さんの方を思っちゃうので。
あ、そうだ!ご結婚おめでとうございます!」