『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編

お仕置きという言葉に何かを想像して頬を赤らめた小春だが、「大丈夫なのに……」と口を尖らせるも、根負けして「今日は病院に寄ってから出勤しますね」と答えていた。

「絶対に行けよ」と念を押して、風原は自宅を出る。


早朝の空いている道路に車を十分ほど走らせると、桜テレビの大きな社屋が見えてくる。

警備員に会釈されてゲートを潜り、地下駐車場の隅の、いつもの定位置に車を止めた。

変わりばえのない当たり前のような一日が今日も繰り返されようとしている。

変わると言えば、読み上げるニュース原稿ぐらい。

局内のヘアメイク室に入ると、嬉しそうにクネクネと体を揺らして近づいてきたのは、花山田大五郎。

髪をセットされながら「涼ちゃん、今度あたしと飲みに行きましょ〜」とオネェ言葉で誘われるのはいつものこと。

それに対して「行きませんよ、大五郎さん」と答え、「嫌ぁぁぁっ!その名前で呼ばないでーっ!」と絶叫させて楽しむのも、いつもと変わらぬ風原の日常であった。
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