『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
『それではまた明日も、六時半にお会いしましょう。モーニング・ウインド』
締めの言葉で生放送が終わったのは、八時ちょうど。
この後は反省会があり、風原の仕事は終わり……ではなく、明日の原稿作りや、他番組の打ち合わせなど細かな仕事に追われ、数時間の休憩を取った後に、今日は十七時からバラエティー番組の司会の収録という、ハードスケジュールだった。
反省会を終え、スタジオを出て廊下を歩く風原。
その涼しげな視線が窓に向けられた。
窓辺に寄って見下ろすと、社屋前のレンガの広場に立つこのテレビ局の象徴のような桜の木が、淡いピンクに色づいていた。
春を感じると同時に、風原の頭には小春のふんわりとした笑顔が浮かぶ。
今まで数々の失敗をやらかしてきたダメ女子アナの小春だが、風原は可愛くて仕方ない。
結婚して一年半の月日が流れても、愛情は薄れることなく、むしろのめり込むように深く濃くなっていくのを感じていた。
桜を見るのをやめた風原は、スーツの上着のポケットからスマホを出して、小春にメールを打つ。
【病院に行った結果を、メールで教えてくれ】と。