『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
スケッチブックは、次のページに。
そこに書かれていたのは……。
「妻の小春アナウンサーが……妊娠しました」
カンペを読み上げた風原は、頭が真っ白になるほどの驚きの中にいた。
さらに彼を驚かせたのは、帽子をパッと脱いで立ち上がった女性ADが、小春だったからだ。
出演者たちが椅子から立ち上がり、「おめでとう!」と口々に祝福して、ふたりに拍手を送る。
驚きからやっと回復した風原の目には、涙がキラリ……。
収録中だということを、忘れているわけじゃない。
この状況は編集された後に、全国放送されることも、もちろん分かっている。
それでも自分の子を宿してくれた妻に夢中で駆け寄り、抱きしめずにはいられなかったのだ。
「小春、よかったな」
「はい!とっても嬉しいです」
「俺も……こんなに嬉しいニュースは初めてだ」
収録後、片付けの始まったスタジオの隅で、ふたりは向かい合って立ち、話していた。
小春は壊されていくセットを見ながら、フフッと思い出し笑いをする。
「涼さん、すごく驚いてましたね」
「ああ。心臓が止まるかと思った」
「ええっ、そんなに!? ごめんなさい!
でも私も、こんな形で伝えるつもりじゃなかったんですけど……」