『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
一見優しそうな顔をしている暮間さんは、実は辛口で厳しい人だと業界内で有名だった。
私は彼女と仕事するのは初めてで、噂の真偽はわからないけど、気難しい人だと耳にしている以上緊張しないわけにいかない。
暮間さんにペコペコ頭を下げて挨拶しているスタッフさん達を見て、気を引き締める。
涼さんを怒らせてしまったことについては可能な限り頭の隅に寄せ、ヘマしないように仕事に集中しようとした。
収録が始まった。
台本と出演者達の様子、イヤホンから耳に入ってくるスタッフさんの指示とカンペに神経を研ぎ澄ませ司会を務めた。
放送時間一時間の番組だけど、いらない部分をカットし編集して使うので、収録時間は10時から2時間半続いていた。
今のところ収録は順調で、あと少しで終わりそう。
3チームに分かれての対戦型クイズゲームの得点を私が発表して、優勝チームを皆で褒め称えていた。
優勝は刑事ドラマチーム。
暮間泉さん達にタイフーンの一人が加わったメンバーだ。
スタッフさんの合図が出るまで拍手喝采が続いて、その後はお約束通りのドラマの番宣になる。
ここまできたら、もう終わったようなものだ。
良かったとホッとしていた。
大女優の暮間さんは、収録の間ずっとにこやか。
気難しくてよくスタッフさんにクレームを付ける人だと噂に聞いたけど、もしかすると何か誤解があるのかもしれないと感じていた。