『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
すっかり仕事が終わった気分で、番宣の前フリをする私。
でも……気を抜くのが、少しばかり早かったみたいで……。
「毎週日曜放送の、“女刑事すったもんだの大事件簿2”。
次回の放送はなんと、主人公ヨネ子の過去が明らかにされるそうです。
見所について主人公ヨネ子役のクレーマーさんに……あっ!失礼しました!
く、暮間さんに番組紹介を……」
スタッフにクレームを付けることで有名な大女優、暮間さん。
それが情報として頭に入っていたせいで、ついうっかり『クレーマーさん』と言ってしまった。
慌てて言い直したけれど、ダメだった。
スタジオにガチャンと大きな音が響く。
それは暮間さんがセットの解答テーブルについていたガラスの照明を、蹴って壊した音だった。
もう番宣どころではなくなってしまった。
シーンと静まり返ったスタジオに、「カメラ止めてー!」と収録中断のプロデューサーの声が響いた。
どうしようとうろたえる私のもとに暮間さんがツカツカと歩み寄り、蔑んだ目でジッと睨んできた。
蛇に睨まれた蛙状態で怯える私に、カメラが回っていた時とは別人のような彼女がこう言った。
「桜テレビには随分と頭の悪い女子アナがいるのねぇ。
あなた、後で私の楽屋にいらっしゃい。
ちょっとプロデューサー、今日の収録はおしまいにしてちょうだい。気分が悪いから帰るわ。
番宣はそっちで適当に作っちゃってよ」