『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編



3分後、私は暮間さんの控え室のドア前にいた。


『なに怒らせてんだよ! すぐに謝ってこい!』


番組プロデューサーに怒鳴られて、慌てて走ってここに来たところだ。


最後の最後にやってしまった……。

よりによって暮間さんの名前を間違えるなんて、私ってダメすぎる。


痛恨の思いで小さくドアをノックすると、すぐにドアが内側に開いた。


開けてくれたのは暮間さんのマネージャーさん。

若い男性で気弱そうな印象の人。


彼は困った顔でおどおどしながら「どうぞ入ってください」と言った。


緊張で手のひらが汗ばんでいた。

深呼吸してから「失礼します」と中に足を踏み入れた。


暮間さんはソファーに座って足を組み、タバコをふかしていた。

ソファーの横で足を止め、私は深々と頭を下げた。



「あ、あの、先程はとんでもない言い間違いをしてしまい、大変申し訳ありませんでした!」



こんなことで許してもらえる気はしないけど、謝るより他に術は無い。


下げた頭を上げることもできずにいると、ソファーが軋む音がして彼女が立ち上がる気配がした。


ツヤツヤした高級パンプスが私の前に止まり、「顔を上げなさい」と言われる。


その言葉に幾らか驚いていた。

え? もしかして、もう早許して貰えるの?


その期待を含んだ予測は、ハズレだった。

上げた顔に煙草の煙を吹きかけられ、ゴホゴホと咳き込んだ。

< 6 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop