『俺様御曹司の悩殺プロポーズ』の文庫に入れられなかった番外編
暮間さんは私の周りをゆっくりと歩きながら、私の失礼をじっとりと責めてくる。
「クレーマーだなんて、そんな酷い言葉を言われたのは初めてよ。
あなた、私のことを何でもかんでもクレームつけるクソババアだと思っているのね?」
「ち、ちがいます! 本当にいい間違えただけで、そんな……」
「嘘おっしゃい。顔に出ているわよ。
あなたみたいな大した苦労も知らない愚かな小娘にそんなふうに思われたなんて、私の小さな心は深く傷ついたわ」
「あ、あの……私は本当にそんなこと思っていなくて……」
「お黙り! 人の話は黙って聞きなさい!
確かに私は現場によく注文をつけるわ。でもね、それはより良い現場にしようと思ってのことなのよ。
皆さんが気持ちよく働けるようにとの良心で言っているの。
それを悪く捉える愚物がいるのよね、あなたみたいな」
確かにクレーマーとの噂を聞いていたけどこれまで会ったことのない人なので、彼女の言うほどの偏見はなかった。
でも、そんなこと思ってないと言い返したらダメみたい……。
『嘘おっしゃい!』『お黙り!』と言われてしまうから。
「大変……申し訳ありませんでした……」
そう呟いてから唇を引き結び、このギスギスぴりぴりジットリした空気に耐えていた。