イライラさせちゃう鈍いやつ
ホームでも電車の中でも牧野はポーッとしていた。

たまたま通りがかってよかった。

小さくほっとする。

なんか危なっかしい気がする。

ガタンッと揺れて牧野の頭が俺の肩に倒れてきた。

この短時間で眠っていたんだ。

花園に着き牧野を起こす。

はっと立ち上がり扉の所に向かうが

「違う。そっちじゃない。」

反対の扉に向かった牧野の腕を掴む。

「え?あ、そっか・・・。」

と言って下りる方の扉に向かう。


俺はまだ牧野の腕を掴んだまま。

「あ、あの・・・?」

「え?・・・あ、ごめん。」

気付いて腕を離した。

改札を出て歩きだしたけどまきのはまっすぐ歩けてないようだ。

石に躓いてよろけるというべたな出来事があり、慌てて牧野の身体を支えた。

瞬間俺の右手が牧野の胸に触ってしまった。

「「!?」」

びっくりして身体を離した。

「ご、ごめんっ!」

「あ、いえ、私の方こそすみません・・・。」

牧野は気にしてるのか気にしてないのか、俺が身体を支えたことに礼を言った。


なぜかいい会話のネタが見つからず、そこからは無言のまま牧野の住むマンションに着いてしまった。

「じゃーな。お疲れ。」

「お、お疲れ様でした。」


ふぅ・・・あれは事故だ。

気にしちゃだめだ。

雑念を振り払うようにして頭を振る。


ま、早く風呂入って寝よ。

開き直り、自分の住むマンションへと急いだ。




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