寡黙な御曹司は密かに溺愛している
「春花、電話知ってる人だった?」

おじいさんに必ず今日中に連絡するとだけ告げて電話を切った後、部署に戻ると美嘉が心配そうに私に声を掛けてきた。

知らない番号から何度も掛かってくるから掛け直してくると言い残したからだろう。

「あっ、うん。おじいさんだった」

「おじいさん?!おじいちゃんってこと?」

「そうそう、おじいちゃん。携帯買ったからって」

おじいさんは他人。
おじいちゃんは身内。

そう言われたような気がして、慌てて言い直して、嘘までついてしまった。
お見合いのことは、まだ美嘉にも言いたくない。美嘉にすら御影屋の孫娘だということも伝えていなかった。


「おじいちゃんか。確かにおじいちゃんって携帯持つとよく連絡してくるよね。あと、写真送ってほしいとかさ。春花も言われた?」


「し、写真は言われなかったかな。それより、私宛に連絡なかった?」


「私は聞いてないな。メモ書きもないならないんじゃないかな?」


「そっか、ありがとう。また後で話そう」


美嘉の話を遮るように、そう言うと美嘉も「了解」と自分の仕事に戻った。


やっぱりおじいさんはおじいさんで、私の中ではそんなにすぐには身内のおじいちゃんとしては受け入れられなかった。
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